クールピクセル関連

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「クールピクセル関連編」

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モノクロ冷却CMOSカメラの場合、カラーカメラと異なり(ベイヤー配列からのカラー合成時に生じるボケが無いため)黒点状のノイズが多数見られることがあります。これがいわゆる「クールピクセル」です。このまとめページでは、あぷらなーとが経験したクールピクセル問題と、その解決法(軽減法)について記載します

①ことの発端
ZWOのカラー冷却CMOSカメラASI1600MC-COOLに続き、そのモノクロ版であるASI1600MM-COOLを入手してテスト撮影を行っていたとき、奇妙なノイズに遭遇しました。
もともと、カラーカメラであるASI1600MC-COOLの運用時にも、このクールピクセルには遭遇していたのですが

前述のデモザイク(ディベイヤー)処理に伴うボケのおかげでそれほど深刻な問題にはなりませんでした。


②黒い縮緬ノイズを引き起こす諸悪の根源
モノクロ版のASI1600MM-COOLの場合は、天体写真の画像処理後に背景を縮緬皺状の黒いスジ状のノイズが多発しており、ずいぶん悩まされました。画像を調べて見た結果、クールピクセルが無視できないレベルで発生しており、いわゆる『縮緬ノイズ』のうち『黒いスジスジ』の発生原因になっていることが推測されました。


③クールピクセルの挙動を調べる
いわゆるホットピクセルと呼ばれる輝点状のノイズはダークファイルを減算することにより軽減できますが、クールピクセルはダーク減算やフラット除算でも上手く消えません。その要因を個々のクールピクセルの挙動を調べることにより推理してみました。
その結果、周辺ピクセルとの輝度差分、輝度比ともに非線形的に変化していることが判明しました。輝度差分が線形的に変化しないということは「ダーク減算では消せない」ことを、輝度比が一定でないことは「フラット除算でも消せない」ことを意味します。

④『クールファイル補正法』の考案
苦肉の策として、クールピクセルを軽減する新しい画像処理法:『クールファイル補正法』を考案しました。その効果は絶大で、黒い縮緬ノイズを退治することに成功しました。


⑤カラーカメラへの適用
ベイヤーボケの影響でモノクロカメラほどは目立たないものの、カラーカメラでもクールピクセルの影響は出ます。そこでカラーカメラについても『クールファイル補正法』が有効かどうかをテストしてみました。その結果、これまで生じていた不愉快な色ノイズが軽減されることが分かりました。


⑥FlatAideProが『クールファイル補正法』を実装!
『クールファイル補正法』は黒い縮緬ノイズ除去に非常に効果的ですが、弱点はその行程が複雑でヒューマンエラーを引き起こしかねない点です。
そんな折、ぴんたんさんより「FlatAideProにクールファイル補正法を実装したい」との打診があり快諾しました。これまで複数の行程を手動で行う必要があったクールピクセル除去がバチ処理一発で可能となったのは素晴らしいと思います。(『クールファイル補正法』はFlatAideProのフリーライセンスで全機能使えます。)


⑦ASI1600MMのクールピクセルには個体差がある
『クールファイル補正法』はASI1600MMを使う際には必須のテクニックだと思っていたのですが、2台目のASI1600MM-COOLを入手したとき、「そもそもクールピクセルが多い個体と少ない個体がある」ことを見つけてしまいました。

吐き出したFITSファイルを解析してみたところ、ASI1600MM-COOLの『2号機』はクールピクセルが少ない代わりに『格子状のノイズ』が盛大に出ることが発覚しました。また解析結果からは、『もともとG素子だった場所』と『もともとRかB素子だった場所』とで輝度がズレていることが判明しました。

⑧MM2号機は素子チャンネルごとに『オフセット』がズレている
各チャンネルごとの輝度についてその積分スペクトルを等頻度法で解析してみたところ、MM2号機は『L1&L4グループ』(元々G素子だった場所)と『L2&L3グループ』(もともとR・B素子だった場所)とで、758だけ輝度がズレていることが判明しました。
また、露光時間をゼロにした画像(バイアスファイル)上でもこの現象は発生していることから、それぞれの素子グループには特有のバイアスが乗っていることが推測されました。したがってバイアスファイルの減算処理により、この件は軽減できると判断されます。

※上記記事内では『オフセット』という表現を用いていますが、これは「ゼロ点補正」の意味合いで用いたもので、天文界一般ではこれを『バイアス』と表すことがほとんどです。(厳密にはバイアスノイズとダークノイズの合算がオフセットです)


⑨『クールピクセル問題』にまつわる騒動
その後、これらの個体差は『ASI1600MMのクールピクセル問題』として、複数のユーザーさんを悩ませることになったようです。現在では個体差は少なくなっているようですが、著しく問題のある個体に当たってしまった場合は、販売店にて対応していただけるようです。

<参考>
この件については、天文リフレクションズさんの記事↓が参考になります。

※記事中の輝度分布データのうち3例は、あぷらなーと保有の個体です。


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